キミは僕に好きとは言わない


桃矢に対する怒りが収まらないわたしを見兼ねて、蓮先輩が優しくわたしの頭を撫でた。


「俺は桃矢くんが一緒でも構わないよ」

「せ、先輩………!」


ぬくもりを感じて我に返り、先輩の前で騒いでしまったことに後悔する。


あぁ、蓮先輩はなんて優しいんだろう。

邪魔者が来ても嫌な顔ひとつしないし、むしろ喜んで受け入れてくれる。

自分勝手なヘタレ桃矢とは大違いだ。


「なんだか気を使わせたみたいでごめんなさい」

「そんなことないよ。俺はなずなちゃんに会えるだけで嬉しいから」

「や、やだ先輩ったら……!」


いつもの爽やかな笑顔を浮かべているのに、落とす言葉は積極的だ。


わたしはすごく単純だから、少しの甘い言葉にもドキドキしちゃう。

胸キュンばかりで心臓がもたないです、先輩……。


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