キミは僕に好きとは言わない
「……萩原先輩は、どうしてなずなちゃんなんですか?」
は?
動かしていた箸を止め、桃矢が急に真面目な声色で言ってきた。
前髪の奥に隠れた瞳は、わたしを無視して真っ直ぐに先輩と向き合っている。
「ちょっと桃矢、急になに言ってるの?」
「僕は真面目に聞いてるんです。なんたって、抜け駆けされたんですから」
「抜け駆け?」
いったい、なんの話をしているんだろう。
気になって先輩を見れば、先輩も真剣な眼差しで桃矢を見据えていた。
「……なずなちゃんは、初めて俺の好きなもを認めてくれた、大切な女の子なんだ」
改めて聞く先輩の言葉に息が詰まる。
「だから俺は、なずなちゃんが好き。いくら桃矢くんが幼なじみでも、こればっかりは譲れない」