キミは僕に好きとは言わない
「誰よあんた!邪魔しないで!」
わたしを殴るはずだった先輩の右手は、桃矢によって封じられている。
どうやら目の前に立つ彼が、わたしの幼なじみだとは気づいてないらしい。
…それもそのはず。
目元まで伸びていた前髪は搔き上げ、結んでいたはずのネクタイは緩めて、いつものヘタレオーラを微塵も感じない。
幼なじみのわたしでさえ、一瞬目を疑うほどの変わりようだった。
よく見えるようになった瞳からは、とてつもない怒りが籠っているような気がした。
「あたしらは今、生意気な1年を教育してやってんのよ!」
桃矢の手を振りほどき、先輩が噛み付くように怒鳴った。
「だから無関係なあんたは、さっさとどっか消えなさいよ!」
「ふーん……」
そんな先輩を見て、桃矢が嘲笑を浮かべた。