キミは僕に好きとは言わない
「な、なにマジになってるのよ!もうどうでもいいわよこんな子………!」
今にも溢れそうなほどの涙を浮かべる先輩だがったが、言葉だけは最後まで強気だった。
グッと唇を噛みながら「行こう」と一言洩らして、周りの先輩たちと逃げるように資料室から去っていく。
残されたわたしと桃矢の間には重苦しい空気が漂っていて、お世辞にも心地良いとは言えない。
そんな息苦しい状況の中、先に声をあげたのは桃矢だった。
「ふぅ……大丈夫でしたか、なずなちゃん?」
くるりと振り返った桃矢は、見慣れたヘラヘラ笑顔を浮かべていた。
「え、」
驚いたわたしは情けない声を洩らす。
ついさっきまで鋭い視線を光らせていたのに、今ではその面影を全く感じない。
いつもの桃矢に戻ったんだと安堵して、ゆるゆると体の力が抜けた。