キミは僕に好きとは言わない
「……さすが幼なじみ。なんでも知ってるんだね」
先輩の言葉が耳の奥でこだまする。
顔を見ずとも、作り笑顔をしているときの声だとすぐにわかった。
「あはは……本当は桃矢よりも、蓮先輩のことが知りたいんですけどね」
ほんの少しの嘘を混ぜて、雰囲気を壊さないように笑ってみせる。
なんて嫌な距離感だろう。
お互い笑っているのに、心はどこか別の場所に置いてあるみたい。
喉の奥がヒュッと冷たくなるのを感じた。
「………これから少しずつ知ってくれればいいよ。俺も同じように、なずなちゃんのことを知っていくからさ」
その言葉は、まるで何かを確かめるように言ったような気がした。
わたしは無言で頷いたけれど、特に意味はわかっていない。
そのまま素直に受け入れていいのか。それとも、もっと別の何かを伝えようとしているのか。
わたしは先輩の彼女なのに……一番の理解者にはなれてないんだな…………。
お互い様ではあるけれど、それはとても悲しい現実だと。そう思った。