キミは僕に好きとは言わない
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「水族館に来るの久しぶりだったけど、たまにはいいもんだね」
「はい、すっごく綺麗でした!」
ひとしきり水族館内を回った後、わたしたちは出口付近にある小さな休憩所に来ていた。
いくつかベンチが並んでいて、遊具のない公園みたいな場所。
「そろそろ休憩しよっか。何か飲み物買ってくるから、座って待ってて」
「わかりました。ありがとうございます」
繋いでいた手を離し、先輩が早足に離れていく。
わたしは先輩の言葉通り、ベンチに腰を下ろした。
「ふぅ……」
温もりの消えた手をぎゅっと握りながら、息を吐く。
なんか、どっと疲れちゃった。
わたしのせいで気を使わせちゃったし、何より桃矢の名前を出してからというもの、先輩の作り笑顔しか見ていない。
いくら幼なじみとはいえ、彼氏とのデート中に他の男の名前を出すのはまずかったかなぁ……。
後悔してもしきれないほどの罪悪感が胸の奥で濁る。