キミは僕に好きとは言わない
けれど、わたしが手を振り払おうとした次の瞬間。
バシッと鈍い音がして、いつの間にか男の人の手が離れていた。
……なんで。
聞き覚えのある声に動揺する。
恐る恐る顔を上げれたら、そこには………。
「桃矢……」
いつかの日にも見たようなしかめっ面で睨む、桃矢の姿があった。
「あ?なんだよお前。もしかして彼氏?」
「どうでもいいだろそんなこと……」
「っ、」
怒気を含んだ桃矢声に、男の人が震え出す。
額にはじわりと汗が染みていて、被害者のわたしですら同情してしまうほど、男の人の顔が青ざめていた。