キミは僕に好きとは言わない


わたしと先輩の会話に割り込むように、桃矢が口を挟む。


「ちょっと、桃矢!余計なこと言わないでよ!」


ようやくいつもの調子が戻ってきて、生意気なことを言う桃矢をキッと睨みつけた。

けれど桃矢は「余計じゃないです」と強気に返し、先輩への攻撃が止むことはなかった。


「僕、言いましたよね?なずなちゃんを泣かせたら許さないって」


わたしの言葉を完全に無視して、桃矢が先輩に詰め寄る。

顔や声から真剣さは伝わってくるけど、その言葉はありえないほどの嘘だ。


「いやいや、わたし泣いてないから!」


だって、涙なんて一粒も溢れていないもの。

こいつは何適当なことを言っているんだ。


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