キミは僕に好きとは言わない


「俺がなずなちゃんを助けられなかったのは事実だから、桃矢くんは俺を責める権利があると思う。約束守れなくてごめんね」


乾いた先輩の笑顔と重苦しい言葉。

その声が胸の奥に沈んで、わたしの心を痛めつけた。


……なんでそんなこと言うんですか。

先輩は悪くないってさっきも言ったじゃないですか。

それなのに、簡単に認めてしまったら桃矢の思うツボですよ。


むしろそんなに優しいなら『次は絶対に俺が守る』くらい言ってください。

じゃないと、『次』はないのかもって考えちゃうんです……………。


「それじゃあ言わせてもらいますけど、なずなちゃんを泣かせるような男は信用できないんで別れてくださいよ」

「えぇ!?直球だなぁ」


「僕の方がなずなちゃんを幸せにできる自信があるんで」

「自信なら俺だってあるよ」


わたしの目の前で、先輩と桃矢は容赦のない会話を続けている。


わたしのために争わないで!なんてヒロイン気取りのセリフが言えるときだけど、当のわたしにそんな余裕はない。


正直、これ以上聞いていたくなかったから。


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