キミは僕に好きとは言わない
ーーーーーって、好き?
脳内で駆け抜けた歪な感情に気がついて、ハッと頭を冷やす。
……なんで急に桃矢が好きとかでてくるわけ?
そりゃあ好きは好きだけど、それは家族に向ける愛情のようなもの。
恋愛対象として好きなのは蓮先輩だけだもん。
桃矢は違う。
違うから。
自分に言い聞かせるように、今ある感情を擦り込んだ。
と、そのとき。
「なずなちゃん、いったいどこまで行くつもりかな?」
苦笑いを孕んだ声と共に、わたしの右手がグッと引かれた。
「え、」
わたしは慌てて足を止める。
いつの間にか下がり気味になっていた視線を上げれば、そこには寂しげな空間だけが広がっていた。