キミは僕に好きとは言わない
「やれやれ」と吐息を零しながら、桃矢の周りに落ちている本を手に取った。
こりゃあ時間かかりそうだな。
「この本どこに戻せばいいの?」
「あっ、それは……えと……この1番上の段のあそこです」
ふらふらと落ち着きのない桃矢の指先が示すのは、ちょうど目の前にある本棚だった。
なるほどねぇ。
暗闇の中で本棚の中いじってれば、そりゃ落とすわ。
「りょーかい。って、わたしの身長じゃ届かないか……脚立はーっと……」
「うわぁああ!脚立使うなんて危ないです!ここは僕がやるのでなずなちゃんはもっと低いところをお願いします」
「わっ、ちょっと」
いつの間にか立ち上がっていた桃矢に無理やり本を奪われた。
もー、なんなのさ。
人がせっかく手伝いに来てあげたっていうのに。
「桃矢じゃ無理そうだからわたしが代わりにやる」って言いたくなったけど、
「わかった。お願いね」
心配そうに見てくるから言い返すのはやめておいた。
こういう時だけ妙に頼もしいんだから。
変なやつ。