キミは僕に好きとは言わない
「ご、ごめんなさい!歩きすぎちゃったみたいです!」
振り返って頭を下げる。
先輩は「散歩みたいで楽しかったけどね」と言ってくれたけど、優しすぎて逆に辛い。
うぅっ………考えなしに先輩を振り回しちゃうなんて………。
しかも、ベンチも何もない広場まで歩いて来てしまった。
唯一あるのは芝生だけで、周りには誰もいない。
そんな落ち込んだわたしを見兼ねてか、先輩がふわりと穏やかな笑みを浮かべた。
「さっき渡しそびれちゃったジュース、ここで飲もっか」
「え……?」
「芝生の上でのんびりしようよ」
先輩が広い芝生の上に腰を下ろして「ほら、なずなちゃんも」と、繋がれたままの手を引く。
「は、はい………!」
先輩の優しさに甘え、わたしも芝生の上に座ることにした。