キミは僕に好きとは言わない
「………先輩を好きになった理由は、ほとんど一目惚れに近かったと思います」
凹んだ空き缶を強く握って、ゆっくりと声を出す。
隣に座る先輩は、優しい声色で「うん」と、頷いた。
「好きになれなかったわたし名前を素敵なものだと教えてくれたり、優しさでいっぱい幸せをくれたり…………蓮先輩は、わたしの憧れ続けた王子様そのものだったんです」
先輩と初めて出会った日のことが脳裏で揺れる。
優しくしてくれて嬉しかった。
先輩の隣に居られるだけですごく幸せで、もっともっと先輩を知りたいと思った。
だから、恋に落ちたんです。
「ありがとう。嬉しいよ」
にこりと蓮先輩が笑った。
先輩の笑顔は何度見てもドキドキするし、わたしもつい顔が緩んじゃう。
「いえ、本当のことですから!」
「そっか……」