キミは僕に好きとは言わない
けれど、そんな先輩の笑顔が消えるのは早かった。
真剣な色を瞳に宿し、こちらをじっと見つめながら。
「でも、それって本当に恋だと思う?」
落ち着いた声色で、そう言った。
え……。
驚きのあまりわたしは言葉を失う。
何を言ってるんだと言わんばかりに蓮先輩を見つめ返した。
「もしもの話だけどさ。もしも俺がなずなちゃん以外の人を好きになったらどうする?」
すると先輩は、わたしを試すような質問を投げかける。
パチパチと瞬きを繰り返している間に「仮定の話だけどね」と、念を押す。
わたしは強引に唇を動かして言った。
「寂しいですけど、先輩が好きになった人なら、きっと素敵な人なんだろうなって思います………!」
だって、先輩は誰もが憧れる王子様だもん。
いつか離れしまっても、仕方ないよねって思えてしまうくらい。
「じゃあ、桃矢くんは?」
「え、」
「桃矢くんがなずなちゃん以外の誰かを好きになったら、どうする?」