キミは僕に好きとは言わない
「やっぱり、か……」
先輩が切なげに声を洩らす。
そして、覚悟を決めたような熱のこもった眼差しをわたしに向けて。
「好きなんだよね?桃矢くんのこと」
静かにそう言った。
「先輩、何言って………、」
震えた指先から空き缶が滑り落ちる。
拾いに行く余裕もない。
ドクンドクンと、心臓を抉るような鼓動が頭の奥まで響いてきて吐きそうだ。
わからない。
わかりたくない。
知らないままの方が幸せなことだってあるんだ。
けれど先輩は、そんな浅はかなわたしを許してはくれない。