キミは僕に好きとは言わない


慣れない手つきで片付けをしている桃矢を気にしつつ、わたしも低い段に本を入れ始めた。


手伝ってあげてるんだし、今日はコンビニで桃矢にケーキでも買ってもらおうかな。

しかも桃矢が鈍臭いせいで仕事増えてるし……。


ほんと、わたしの幼なじみは手が掛かる。

だから嫌いってわけではないんだけどね。

ずっと一緒に居るんだもん。桃矢のいいとこは誰よりもいっぱい知ってるから。



ーーーガチャ。


「おー、仕事は捗ってるかー?」

「あっ!先生!」


パタパタと忙しなく桃矢と図書室を走り回っている最中だったというのに、平然とした顔で内田先生がようやく図書室にやって来た。


「来るの遅すぎですよ?」

「悪い悪い。今日締め切りの書類を出し忘れててな」


「あはは」と軽快に笑い飛ばす先生の姿はなんだか無性に腹が立つ。

生徒には「締め切り厳守、余裕を持って計画を立てること!」なんて言うくせに自分の締め切りはゆるゆるじゃない。


「それにしても、もうほとんど終わってるじゃないか。さすが戸松と杉浦はいいコンビだな」


いいコンビって……ただの幼なじみなんですけど。

こんなことでいいコンビのレッテルを貼られてもたいして嬉しくない。


「いい加減桃矢にばっか手伝い頼むのやめてくださいよ。頼まれたら断れない性格なの先生だって知ってますよね?」

「いやー、先生つい杉浦の優しさに甘えちゃうんだよなぁ」

「そろそろ他の生徒に甘えてください」


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