キミは僕に好きとは言わない
教室を出て行く蘭に手を振ってから、一息ついた。
「はぁ……」
わたしも補習の教室に行かないとな……。
手に取った鞄がいつもより重たく感じるのは、気分が乗らないせいかもしれない。
鈍くなった足をずりずり引きずりながら、肩を落として廊下を歩く。
目の前に迫った教室のドアは閉まっていたけれど、桃矢はもう来ているんだろうなと悟った。
「し、失礼しまーす……」
恐る恐るドアを開ける。
すると、やはり先に来ていた桃矢が「あ、なずなちゃん遅いですよー!」と、振り返る。
「あはは、ごめんごめん」
「ようやく来たか、戸松。補習は2人だけだから、俺がみっちり教えてやろう」
数学担当の佐々木先生が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
ごめんなさい、先生。
今はそれどころじゃないです………。