キミは僕に好きとは言わない


すごい……。

みんなの前で告白するだけでもすごく勇気がいることなのに、まさか成功させちゃうなんて。

照れ臭そうに手を繋ぐ2人を見ていたら「いいなぁ…」と、言葉が落ちていた。


わたしもあんな風に桃矢と笑い合えたら幸せなんだろうな…………。

文化祭が終わったら気持ちを伝えるって決めたけど、こんな調子で本当に言えるのかな。


外を見ることにも疲れて、適当にぶらぶらと歩き始めた。

行く当てもなく、ただただ廊下を歩くだけ。


人が少ないとはいえ、文化祭特有の盛り上がりのおかげで、わたしが1人で歩いていても誰も気に留めない。


どこへ行こうか。

やっぱり、みんなのところへ戻ろうか。

歩きながら考えたけれど、答えは決まらずに足が進むだけ。


気がついたら、ひと気が極端に減っている場所まで歩いていた。

非常階段の近くは出店もなく、誰もいない。


外の音が届かないこの場所はとても落ち着けた。


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