キミは僕に好きとは言わない


「なずなちゃん、保健室行きますか?」

「ううん、平気………起き上がるのが面倒だなって思って」

「なんですかそれ。心配させないでくださいよ………」

「あはは、ごめんごめん」


苦笑いを零してから、観念して体を起こした。

頭にできたコブが痛かったけど、心配性の桃矢を前に強がって笑った。


「んで、なんで桃矢がこんなとこにいるの?宣伝するからって、女子に連れてかれてたじゃん」


隣に座った桃矢を見る。


「隙を見て逃げちゃいました。急に騒がれて怖かったので」

「へー、そっか。なんだか桃矢らしいね」


慣れてないのも当然だ。

これまでの日常生活では端っこでひっそりと生きてきた桃矢が、急に中心に引っ張られて騒がれてるんだもの。


そりゃあ、びびって逃げ出したくもなるよね。

元がヘタレなら尚更だ。


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