キミは僕に好きとは言わない
「なずなちゃんはどうしてこんなところに来たんですか?せっかくの文化祭ですよ?」
「皐月がいないと暇でさ。適当に歩いてただけだよ」
半分嘘で半分本当。
告白大会から逃げ出して、1人で回る気になれなかったからここに来た。
理由として何か言うほどの意味はない。
「そうですか……」
腑に落ちない顔をして、息を洩らすように桃矢が言う。
そんな桃矢に違和感を覚えて、わたしは「どうしたの?」と、首を傾げた。
「………なずなちゃん」
「ん?」
「僕に何か言うことないんですか?」
桃矢に言うこと……?
王子服似合ってるよ。とか、そういう簡単な言葉を求めている感じではなかった。
やけに真剣な瞳で見つめてくるから、変にドキッとする。