キミは僕に好きとは言わない
わたしは、何度桃矢を傷つければ気が済むんだろう。
恋が下手くそなんてものじゃない。
自分が傷つかない方法を探して逃げていただけだ。
相手がどんなにボロボロになっても、知らないふりをし続けて。
「…………なずなの考えてること、全然わかんねーよ」
桃矢が俯きがちに言葉を零すと、掴んでいたわたしの右手をゆっくりと離した。
いつもの前髪がないから、俯いていても表情がよくわかる。
桃矢は、酷く傷ついた顔をしていた。
「と、桃…………」
「ごめんなさい」
と、桃矢が階段から立ち上がる。
わたしはその場から動けずに、桃矢の背中を見上げた。
「今は、なずなちゃんと一緒に居たくありません」