キミは僕に好きとは言わない

桃矢の放った言葉が胸に刺さって苦しい。


待って。行かないで。

そう言いたいのに、言葉にはできなくて。


少しずつ離れていく桃矢の背中を、わたしは追いかけることすらできなかった。


違うのに……。

迷惑だなんて思ってないよ。


桃矢がわたしを好きでいてくれることが、すごく嬉しかったんだよ。

それなのに。


「行かないでよ………」


ようやく言葉にしても、もう遅い。


桃矢の姿はどこにもなくて、零した言葉は空気に紛れて消え去った。