キミは僕に好きとは言わない
こんなにすれ違ってしまう恋なら、いっそのこと叶えない方がいい。
その方がずっと楽だし、ただの幼なじみだって幸せだ。
「それは、本当になずなちゃんの本心?」
俯いていたわたしの耳に、先輩の声が入り込む。
あまりの真剣さに驚いて顔を上げた。
「なずなちゃんが桃矢くんと幸せになってくれなきゃ、俺が手放した意味がないよ」
先輩は眉を下げながら笑っていた。
必死に作られた先輩の笑顔は、見ているだけで心が痛んで、わたしを後悔の海へと突き落とす。
再び浮かんできた涙を慌てて拭おうとハンカチを持ち直したら。
「あのね」
と、先輩が天井を仰いで言った。