キミは僕に好きとは言わない


司会者の声に続くように、ワァッと歓声が聞こえた。

屋上に続く階段とはいえ、ステージが近いこの場所ははっきりと声が届く。

もうそんな時間なんだ……と、心の中で呟いた。


「俺、ずっとステージの近くにいたから、なずなちゃんのクラスメイトが言ってたの聞いちゃったんだよね」

「え?」


「桃矢くん、告白相手として呼ばれてるらしいよ」


うそ…………桃矢が………?

蓮先輩の言葉が胸の奥で重たく沈んだ。


地味でヘタレで臆病で。人と上手くコミュニケーションもとれない桃矢が告白される?

もしかして、本当はすごくかっこいいんだって、みんなが気づいちゃったから?


背筋が急に寒くなった。

最低だけど、桃矢には待っていてほしかったから。


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