キミは僕に好きとは言わない
「行きなよ、なずなちゃん」
「っ………」
「何かあったら、俺がまた慰めてあげるからさ」
先輩。
蓮先輩。
「…………、……ありがとうございます! 」
階段から立ち上がって、ガバッと頭を下げた。
もう涙は浮かばない。
だって、蓮先輩の前ではたくさんたくさん泣いたもん。
泣き虫の元カノって思われたくないし、どうせならわたしだって素敵な人だったと思ってほしい。
いつかわたしも、蓮先輩みたい人になりたいな。
そしてわたしは、最後ににこりと笑ってから、踵を返して駆け出した。
もう逃げない。誤魔化さない。
どんな結果が待っていようと、わたしは桃矢に好きって言いたい。