キミは僕に好きとは言わない


……わたし、こんな安全な場所に隠れたままでいいのかな。

桃矢からの言葉を待つだけなんてずるいよね。


だって、桃矢に好きって言いに来たんだもん。

誰かが告白してしまう前に、わたしは桃矢のところに行かないと。


「あの……っ、すみません、通してください……!」


観客席を強引にかき分けて、ステージまで急ぐ。

心の中で何度も桃矢の名前を呼んだ。


桃矢、桃矢、桃矢。

こっちを見て。気付いてるんでしょ。

わたし、桃矢に言いたいことがあるんだよ。


傷つけてごめん。

待たせてごめん。

桃矢が好き。誰よりも、1番好き。


今度こそちゃんと伝えるから。


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