キミは僕に好きとは言わない


「杉浦くんの好きな人ってーーーーー」

「っ……ちょっと、マイク貸して!」


ステージに辿り着いたわたしは、司会者が持っているマイクを強引に奪い取った。


「えっ、戸松!? 」


目を丸くしてわたしを見る司会者と、ざわつく会場の視線が痛い。


まさか自分でもこんなに大胆な行動ができるなんて驚いた。

蘭に告白大会なんかでない!って言ったのに、自らステージに上がっちゃうなんて。


「なずなちゃん…………」


桃矢の声が聞こえた。

呼吸を整えながら、少しずつ桃矢の前まで歩く。


向き合うのは怖かったし、マイクを持つ手も酷く震えていた。

それでも、言うなら今しかないと思ったから。


スッと息を吸い込んで、思いっきり叫んだ。


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