キミは僕に好きとは言わない
「わたし、桃矢が好き…………っ!」
せっかく息を吸い直したのに、情けないくらいの涙声で。
言い終わった後は、頬に冷たい感覚が流れていた。
「………はっ、なんだよ急に」
鼻で笑うような桃矢の声が聞こえる。
その荒々しい口調は、いつものヘタレじゃなかった。
怖くなって、わたしは思わず俯いた。
「俺がどんなに好きだって言っても絶対に振り向かったくせに、今更俺が好き?笑わせんな」
マイクを持つ手に力が入る。
せっかく桃矢が好きだと言えたのに、返ってくる言葉に怯えてしっかり前が見えない。
「本当、遅すぎんだよ」
「ご、ごめん……」
けれど桃矢は、御構い無しに言葉を紡ぐ。
わたしは必死に返事を戻した。