キミは僕に好きとは言わない
ふと顔を上げたら、桃矢が小さく笑っていた。
手を伸ばせば届いてしまう距離に、今更ドキリと心臓が弾む。
そして次の瞬間、甘く優しい桃矢の声が耳の奥まで響いた。
「好きだよ、なずな」
迷いのない真っ直ぐな告白は、マンガで見たどんなセリフよりも愛おしく思えて。
ステージに立っていることも忘れ、桃矢に魅入ってしまった。
「この気持ちは昔からずっと変わらないし、これから先も絶対に変わらない自信がある。俺には、なずなだけだよ」
嬉しすぎて言葉にならない。
だけど、確かに繋がった想いがここにある。
「わたしも好きっ………わたしも、桃矢だけだよ…………っ!」
そしてわたしは、初めて自分の意思で桃矢の胸に飛び込んだ。