キミは僕に好きとは言わない
「カップル成立でーす!」
ワァッと歓声が響いた。
冷静に考えたら、とんでもないことをしているんだと恥ずかしくなったけど、幸せを確かめるように強く、強く、抱きしめる。
「ちょ、なずなちゃん……苦しいですよ……」
「我慢して。このくらいしなきゃ、実感わかないんだもん」
ぎゅと抱き止めておかないと、どこかへ消えてしまいそうで。
これは現実なんだって感じたかった。
「……俺からすれば、なずなの言葉の方が信じられないんだけど」
「え、なんで?」
「一生、俺の片想いかと思ってたから」
体を離して見上げたら、桃矢がジッと目を細めていた。
わたしは思わず吹き出して「あんなに積極的だったくせに。変なの」と、笑った。
蓮先輩との仲を邪魔して、無理矢理キスをしてきた男が今更何を言う。
あんなに真っ直ぐ想いをぶつけられたら、嫌でも桃矢が好きだって気付いちゃうよ。