キミは僕に好きとは言わない


「あのなぁ、強引キャラもヘタレキャラも、演じるの結構疲れんだからな」

「それなら、本当の桃矢はどっちだったの?」


「んー、なずなからキスしてくれたら、教えてあげてもいいよ」


「えぇ!?なにそれずるい!」

「ずるくていいんだよ。ほら」


唇に人差し指を当てて、早くしろよと急かしてくる。

しかもその声は観客席にまで聞こえたらしく、謎のキスコールが飛び交っていた。


うそ。本気!?

気持ちが通じた幸せに浸っていたというのに、こんなの逃げ場のない罰ゲームみたいなものだ。


「っ……このっ………」


余裕そうにしている桃矢に腹が立って。

どうにか驚かせてやろうと、精一杯の勇気を込めた。


< 286 / 289 >

この作品をシェア

pagetop