キミは僕に好きとは言わない
「あのなぁ、強引キャラもヘタレキャラも、演じるの結構疲れんだからな」
「それなら、本当の桃矢はどっちだったの?」
「んー、なずなからキスしてくれたら、教えてあげてもいいよ」
「えぇ!?なにそれずるい!」
「ずるくていいんだよ。ほら」
唇に人差し指を当てて、早くしろよと急かしてくる。
しかもその声は観客席にまで聞こえたらしく、謎のキスコールが飛び交っていた。
うそ。本気!?
気持ちが通じた幸せに浸っていたというのに、こんなの逃げ場のない罰ゲームみたいなものだ。
「っ……このっ………」
余裕そうにしている桃矢に腹が立って。
どうにか驚かせてやろうと、精一杯の勇気を込めた。