キミは僕に好きとは言わない
「あれ、なんで俺の名前……」
待って待って待って待ってよ。
やだ。
夢なら覚めてっっ!!!
近くで見られなきゃ誰かわからないだろうから叫んでもバレないって踏んでたけど……。
まさか同じ階に!しかもあの萩原先輩が同じ廊下に居たなんて!?
「っ〜〜〜〜!」
羞恥心に耐え切れず、その場に膝を抱えて座り込んだ。
うわぁああああ!!
桃矢、ごめん!バカって叫んだこと謝るから…………今すぐわたしを引っ叩いてよぉおおお!!
合コンには行けず図書室の手伝いを強いられ、ヘアピンを無くし挙げ句の果てには幼なじみを「バカ」呼ばわりしている現場を王子様に目撃される。
今日は人生で最も最悪な日と呼んでも過言ではないかもしれない。
あぁ……穴があったら入りたい。
そして埋まりたい……。
「ゔっ……うぅっ………」
涙声が目立つわたしの情けない声だけが聞こえてくる。
だけどそんな不気味な声を発しているのもつかの間、
「ひぇっ!」
たぶん萩原先輩に肩を掴まれたんだと思う。
ビクッと体が跳ねた。