キミは僕に好きとは言わない
「“桃矢くん”とケンカでもした?」
「あっ、いえ……その………」
うっ……やっぱ聞かれてたよね………。
「大事なヘアピン無くしてイライラしちゃって、つい……えへへ……」
我ながら気持ち悪い回答だったと思う。
涙で汚れた無様な顔面を王子に晒し、桃矢を罵倒した理由はヘアピンを無くしたから。
でも事実と言えば事実だし?
まぁ、わたしが事実にしたいだけなんだけどね。
そんなヘンテコな言い訳が萩原先輩に通じるはずもなく「ヘアピン……?」と、不思議そうに首を傾げていた。
ヘアピンを無くしたくらいで叫ぶ女って………改めて考えると頭おかしいかな。
てゆうか先輩いつまでここにいるの!?
醜態晒した後だもん、わたしのメンタルそうとうきてるよ。
今すぐこの場から立ち去りたいけど先輩を差し置いて逃げるわけにはいかなくて、
早くどっか行ってくれないかな、と願うことしかできなかった。