キミは僕に好きとは言わない
「あっ!キミが無くしたヘアピンってもしかして………」
何かを思い出したかのように、萩原先輩がガサガサとスクールバッグに手を突っ込んで「えーっと、確か……」とブツブツ言葉を発している。
なんだなんだ、萩原先輩がわたしのヘアピン持ってるの?
そんな偶然起きるわけなーーーーーー。
「さっきたまたま拾ったから職員室に届けに行こうと思ってたんだけど、違うかな?」
目の前に差し出されたのはナズナのモチーフがついたヘアピン。
それは確かにわたしが探していたあのヘアピンだった。
偶然……起きちゃったよ……。
「そ、それです!」
「そっか。持ち主が見つかってよかったよ」
ヘアピンを受け取ろうと手を伸ばした瞬間、
「ひぇっ……!」
先輩の手がわたしの手を先にぎゅっと掴んでいた。
うわぁあああ……なんでこんな手握るみたいにして渡すのっ………。
急に掴まれた右手が熱くて、飛び出しそうになる心臓が痛い。