キミは僕に好きとは言わない


「それじゃあ、行ってくる」と蘭に告げ、ハンカチを掴んから教室を出た。


萩原先輩って何組かな。

3年生の教室って行ったことないから少しだけ緊張しちゃう。


騒がしくなってきた廊下を歩き、萩原先輩とすれ違わないかな?と、心を躍らせた。


先輩に会ったらなんて言おう。

昨日はハンカチを貸してくれてありがとうございました…………ってのが普通?


恋愛経験が乏しいわたしでは、すぐに先輩を落とせるとは思えないし、少しずつ仲良くなる以外の道がない。

でも、そっちのがいいよね。


わたしの名前、覚えてくれてるかな。

……覚えてくれてたらいいな。



そうやって先輩のことばかり考えていたから、ちゃんと周りを見れていなくて。


「………わっ!?」


突然目の前に現れた人物に気づかず、そのまま突っ込んでぶつかってしまった。


うわ、情けない……。


「ごめんなさ……」

「あぁ!なずなちゃん!」


え?

顔を上げれば「あぁ、なんだ」と、ため息が零れた。


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