キミは僕に好きとは言わない
不服そうな顔をする桃矢と、笑顔を浮かべる先輩。
今の言葉の意味をもっと深くまで知りたくなったけど、あと一歩のところで身を引いてやめた。
あんまり舞い上がりすぎちゃ、後になって怖いよね。
本気って言っても後輩としてかもしれないし。
「よしっ!じゃあ、さっきの続きを話すね。ひまわりはたくさん種類があるんだけど、1番有名なのはこのサンリッチって品種かな」
纏わりつく妙な空気を吹き飛ばすように、先輩ひまわりを抱えてそう言った。
わたしも気持ちを切り替えなければと思い。
「あ、こっちに置いてあるのもサンリッチですか?」
と、近くにあったひまわりを慌てて指差した。
「うん、正解。それはサンリッチマンゴーって言うんだ。俺が持ってるサンリッチオレンジより、少しだけ花弁の色が明るいのが特徴だよ」
「へぇー、そうなんですね」
たしかに先輩の言う通り、マンゴーの方が、オレンジより少しだけ明るか見えた。
隣にある他のひまわりたちも、似ているけど花弁や芯の色が違ったり、それぞれ特徴があって面白い。
こんな細かい違いをすぐに見分けられる萩原先輩は、やっぱりすごい。
と、思うと同時に、先輩は本当に花が好きなんだと伝わってきた。
優しい、優しい、先輩の笑顔。
今日は少しでもわたしのを好きになってもらおうと思っていたのに、わたしの方がどんどん先輩を好きになってる気がする。
……昨日より、ずっとね。
たぶん、明日はもっと好きになるんだと思う。