キミは僕に好きとは言わない


ーーーそれから夢のような時間はあっという間に過ぎていき、気がつけば空にうっすらと夕日が浮かんでいた。


「今日は来てくれてありがとう。なずなちゃんのおかげですごく楽しかったよ」

「こちらこそ、誘っていただきありがとうございました……!もう、すっっごく楽しかったです!!」


本当に今日は素敵すぎる1日だった。


一通り先輩に店内を案内してもらった後は2階の自宅にお邪魔して、お茶をご馳走になったり、花に関する本を紹介してもらったり。いろんなことを話した。

桃矢がいたせいで2人きりにはなれたかったけど、それでも十分すぎるくらい幸せだった。


「うん。またぜひ遊びに来てね」

「はい!」


何も特別なことはできなかったけど、先輩との距離は少しだけ縮まったような気がする。

片想いの第1歩、ちゃんと踏めたよね。


「桃矢くんも、今日はありがとう」

「いえ、僕はなずなちゃんの付き添いで来ただけなんで」

「それでもありがとう」


先輩に対して終始失礼な態度を取っていた桃矢にもありがとうだなんて、心が広すぎる。


先輩のこういうところにも憧れちゃうな。


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