キミは僕に好きとは言わない


最後まで笑顔だった先輩に手を振ってから、桃矢と並んで歩いた。


「はー、楽しかったなぁ。先輩と一緒に居られて超幸せだった!」

「そうですね」

「彼女になれたらもっと幸せなんだろうなぁ」

「そうですね」


「……ねぇ、さっきから適当に答えてない?」

「そんなことないですよ」


いつもよりほんの少しだけ低い、桃矢の声。

その声色に違和感を感じて顔を上げてみたけれの、長すぎる前髪が桃矢の表情を隠していた。


「もしかして、わたしが先輩の話ばかりするから怒ってるの?」

「………、」


本当はなんとなく気づいていた。

わたしが先輩を気にかけるたび、柄にもなく強気に突っかかっていたのは、たぶん………。


「ちゃんと桃矢のこともかまってあげるから心配しないで!」

「はい?」


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