キミは僕に好きとは言わない
いくら先輩との距離が縮まったからって、デートに誘うなんてそんな………。
先輩は優しいからオッケーしてくれるかもしれないけど、断られたらと思うと怖くて声も出ない。
「ふーん。でもそうやって悩んでる間に先輩の予定埋まっちゃうんじゃない?なんたってモテるし」
「うぐっ……」
たしかに、一理ある。
わたしが先輩のクラスに遊びに行くたび、いつも周りには女の人たちがいた。
普段から萩原先輩の近くにいるんだもん。夏休みだって当然、先輩に会おうとするよね?
そしてそのままゴールインだってありえるわけだし………。
ひぇええ……なんて最悪な未来……。
ハンカチを返しに行くときは勢いで飛び出して行けたのに、いつの間にか嫌われないような行動をしていたような気がする。
こんなんじゃ、いつまで経っても進展しないかな?
少しずつ距離を縮めている間に先輩を取られちゃうかな?
「ちょっと、先輩のとこ行ってみようかな………」
嫌われるより、誰かに先輩を取られちゃう方がよっぽど辛い。
わたしの目標は先輩と仲良くなるだけじゃなくて、彼女になることだもん。
夏休み。裏を返せば彼女に近づくビックイベントじゃない?