キミは僕に好きとは言わない


しかそのとき、先輩とわたしの間にまたやっかない男が現れた。


「なずなちゃんから離れてください」


「ぎゃっ!?」


びっくりして声をあげるも、目の前の彼は表情ひとつ変えない。

変えるどころか、ちょっと怒ってる?


「僕がいない間になずなちゃんに近づくなんて卑怯ですよ」


あからさまな敵対心を燃やして先輩を睨みつけるのは、やっぱり桃矢。

この男はいっつも、いい雰囲気のときに邪魔するんだから!


「ごめんごめん。今度から気をつけるよ」


そして相変わらず謙虚な先輩。

別に先輩がいつ来ようが桃矢には関係ないじゃん!って怒りたくなる。


「なずなちゃん、先輩とデートに行くって本当ですか?」

「も、もちろん!」


桃矢のやつ、影薄いのをいいことに全部聞いてたな?

わたしが先輩の家に行くときも知ってたし、新手のスパイみたいなことしないでよ………。


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