キミは僕に好きとは言わない


「そうですか……僕をおいて行くんですね………」

「は?」


「なずなちゃんは、そうやって僕をひとりにするんですね…………僕が地味でヘタレで臆病で何もできない嫌われ者だから……」

「え、いや……桃矢?」


急に負のオーラを出して訴えてきているけど、桃矢には全く関係ない話だよね?

ただ先輩と遊びに行くだけだし……。


「なら、桃矢くんも一緒に行く?」

「え!?」

「実はチケット3枚あるんだ。人数多い方が楽しいし、どうかな?」


せ、先輩ーーーー!?


もう1枚チケットを取り出して、萩原先輩が爽やかに微笑んだ。


いやいや、桃矢がついて来たらデートじゃなくて、ただ後輩と遊びに行くだけになっちゃうよ!?

こんなヘタレ男に気を使わなくたっていいのに!


「えっ、いや……僕は………その……」


つい数秒前まで駄々をこねていたはずの桃矢が、突然降りかかった提案に戸惑いっぱなしだ。

そうだよね、コミュ力皆無の桃矢が遊びに誘われることないもんね………。


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