キミは僕に好きとは言わない
「はぁ……」
がっくりと肩を落とした。
今になって後悔と怒りが交互に押し寄せてくる。
「もー、桃矢のバカァ!少しくらい気使ってくれてもいいじゃん……」
「あはは、やっぱりなずなちゃんが心配だったので」
桃矢の力のない笑顔が、これほど心に刺さるのは初めてだろう。
文句を言いたくなったけど、それすらも疲れて喋るのをやめた。
せっかくの夏休み。
一瞬でも期待してしまった分、楽しみが半減してしまった。
先輩に会えるのだから喜んでいいはずなのに、デートの予定が消えたかと思うと素直に笑えない。
「楽しみですね、フラワーガーデン」
「はは……むかつく……」
最後に小さな抵抗だけしてやった。
それだけ言ったら気分もスッキリして、すぐに片想いモードに戻れた。
何を着て行こうとか、何を話そうとか。
こうしてすぐに気持ちを切り替えられるくらい、わたしは先輩に夢中なんだと感じた。
それはもう、桃矢のことなんか気にならないくらいにね。