キミは僕に好きとは言わない
「へっくしゅ………!」
だから、早く準備しよう。
いつまでも下着姿でいるもんじゃない。可愛さゼロのくしゃみが響いて、鼻の奥がツンと痛む。
先輩の前でこんな不細工なくしゃみが出たら最悪だ。夏だからって油断大敵。
今日のために買ったワンピースをもう1度身体に当ててみて、やっぱりこれだと頷いた。
すると、次の瞬間……。
ーーーガチャ
「なずなちゃーん、ちゃんと起きてますかー?」
わたしの部屋の扉が、ガチャリと音を立てた。
「へ?」
「あっ…」
そして、部屋の扉を開けた犯人の桃矢と目が合う。
固まっていたのは、時間にしたらほんの数秒だったと思う。
持っていたワンピースが滑り落ちて、廊下から溢れる風がひやりと肌を撫でた。
ま、ちょっと………な……!?
「なずなちゃん、あのー……」
「きゃあああああ!?」