キミは僕に好きとは言わない


「雑草だから可愛くないなんて決めつけないほうがいいですよ。僕はどんな綺麗な花よりも、ナズナが1番好きです」


えっ……。

胸の奥を、ぎゅっと掴まれたような気がした。

以前、萩原先輩にも似たような言葉を言われたのを思い出す。

嬉しかったから、今でもずっと覚えてるもん。


『雑草だって立派な花なんだよ。ぺんぺん草はあくまで別名』

『ナズナの花の名前の由来が「撫でたいほど可愛い」って意味からきてること知ってた?』

『俺は好きだよ、ナズナ』


先輩から貰った言葉が、頭の中でリフレインする。

わたしにとって特別な言葉だったのに、まさか桃矢も同じことを言うとは思わなかった。


先輩同様、特に深い意味はないのかもしれない。

けれど、先輩を好きになったキッカケの言葉をこうも簡単に言われたら、嫌でも意識しちゃう。



「ーーーーい、いつまでここに居るつもり!?着替えてる途中なんだから出てってよ!! 」


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