キミは僕に好きとは言わない


「わっ、なずなちゃっ……」


ーーーバタン


強引に桃矢を部屋から突き出して、ずるずると扉の前にしゃがみ込んだ。


「っ、はぁ……」


桃矢のくせに、桃矢のくせに、桃矢のくせに…………生意気。


人の下着姿を見ても何とも思わないような鈍感男。そんな男にドキドキしてしまった自分も嫌。


違うよ。恥ずかしかったからだし。

いつもなら、あんな変な気持ちになったりしないもん。

誰に聞かれたわけでもないのに、ひとりで勝手に言い訳を重ねた。


これから先輩に会いに行くっていうのに、桃矢のことしか考えられないよ……。


待ち合わせ前に顔の熱、下がってるといいな。




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