キミは僕に好きとは言わない

清純な心に清らかな心。

それはまるで、萩原先輩を表すぴったりな言葉だと思った。


「もしかして先輩の名前が蓮なのも、スイレンやハスからきてるんですか?」

「うん、俺はハスの方なんだけどね。花屋の息子だから、花に関する名前を付けたかったんだって」

「そうなんですね!先輩にぴったりだと思います!」

「ははっ、だといいけど」


冗談交じりに笑う先輩に「本当ですよ」と、言いたくなった。


純真で真っ直ぐ。そして、優しすぎるくらい優しい人。

嫌なところなんか1つもないよ……。


「そういえば、桃矢くんも花に関する名前だよね?」

「えぇ、まぁ……」


相変わらず萩原先輩には素っ気ない態度をとる桃矢。


先輩は桃矢を見ているのに、桃矢は先輩と目も合わそうとしない。

ふいっと逸らして、スイレンの池を見つめている。


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