キミは僕に好きとは言わない


「桃の花言葉……私はあなたの虜。まさに桃矢くんのことだよね」

「へ……?」


くすくすと笑う先輩に首を傾げた。

それって、先輩が桃矢の虜だって意味?


えっ?どういうこと!?


「えーっと、先輩?」


言葉の意味を知りたくて先輩を見た。

けれど先輩は、わたしではなく桃矢を見ている。

スイレンの池を見ていたはずの桃矢も、ようやく先輩を見据えて、何か言いたげに瞳を揺らしていた。


「萩原先輩。あなたは、僕に何が言いたいんですか?」


見慣れない桃矢の真剣な眼差しに、ゾクッと背筋が凍った。

わたしを見ているわけじゃないとわかるのに、桃矢から溢れる妙な雰囲気に驚いてしまった。

そして、先輩はもっと驚くような言葉を言う。


「桃矢くんは本当になずなちゃんが好きなんだなぁって」


ーーーーーは?


今日の萩原先輩の言葉を理解するのは、どうも難しい。

桃矢が……わたしを好き?


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