キミは僕に好きとは言わない
「手を出さないで、か……」
桃矢の言葉を間に受けたのか、先輩がぽつりと呟いた。
「先輩!桃矢のことなんか気にしないで、次行きましょうよ!」
ギスギスした雰囲気をなんとかしたくて、とっさに先輩の腕を掴んだ。
けれど先輩は、その場から動こうとしてくれない。
なんで?と思ううちに、先輩がスッと息を吸った。
「じゃあ、本気ならいいの?」
「は?」
「本気なら、手を出しても構わない?」
え………?
先輩の言葉が耳の奥でこだまする。
意味がわからない言葉のはずなのに、どうにかして意味を知ろうとする自分が嫌になる。
都合の良いように解釈しちゃだめだよね。
勘違いが1番辛くて酷い。
だから、だめなのに………。
鳴り響く心臓は、とても正直な音を立てていた。