キミは僕に好きとは言わない
「なずなちゃん」
「ひゃい!?」
突然振り向いた先輩と目が合った。
腕を掴んでいたせいで距離が近い。
こんなに近いと、加速する心拍数が先輩にも聞こえてしまいそう。
「俺さ、桃矢くんにも聞いて欲しいから、今日2人を誘ったんだ」
「は、はぁ……」
「やっぱりこういうのって、抜け駆け禁止だと思うし」
「そう、なんですか……?」
「うん」
確信を避けた先輩の言葉が、わたしの気持ちを曖昧にさせる。
そんなに近くで見つめられたら、期待しちゃうじゃないですか。
なんか、良い言葉がもらえそうな雰囲気なんだもん。
このまま、先輩の瞳に吸い込まれて溺れてしまいそう……。