きみに触れられない
「塩谷くん、私__」

頑張るよ、と言おうとしたところで二人が帰って来た。


「ごめんね、遅くなっちゃった」


私は何も言えなくなって、二人に何を言おうだとか、カナはどうしようだとか、必死に思考を巡らせていると、「じゃあ、早速教えてもらおう」とカナが切り出した。

ああ、やっぱり、助けてくれた。

言ってくれた通りに。


「米山さん、お願いします」


ちょっぴりふざけた口調でカナが言う。


「え、あ、うん」


呆気にとられながら返事をすると、女の子二人も「米山さん、お願いします」と頭を下げる。

「そんな、頭を下げなくても」とあたふたしていると、「俺、この問題分からなくてさ」といきなりカナが質問してきた。

「あ、えっと、こ、これ?」

「そう、これ。どうすればいい?」と言ったカナに同調するように、「私もそれ分からなかった」と女の子達が言う。

「え、えっと、これは、このまえ習ったこの公式を使って__」

私が解説する度に「そっか、それを使うのか」「ここで式を変形させればいいんだな」などとカナが私の説明に補足をしてくれた。そのおかげで話がスムーズに進む。

「ああ、そっか、そういうことだったんだ!」

女の子達も、カナにつられるようにたくさん質問をしてくれた。

「ここは、またこの公式を使えばいいの?」

「そう。それを使って、式を簡単にしていけばいいよ」

「あ、解けた!」

岩田さんが立ち上がった。

「次の問題は、どうすればいいの?」

「さっきここの値が出たから、その結果を使って__」

「そっか、ここにさっきの答えを入れたらいいんだ!」

森谷さんも明るい声で言う。

「そうそう。そうしたら答えが出るよ」

すると岩田さんは「分かった!あとは1人でできると思う!」と言った。

それから二人は立ち上がって「ありがとう」と微笑んでくれた。

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